トーマは相変わらず全身の筋肉を痙攣させつづけながら横たわっていた。
美しく割れた腹筋は高速に震えており、呼吸は不規則で弱かった。
ルイは数人の男に囲まれて、別の部屋に担ぎ込まれていた。
「……おい何するんだ!!?やめろーーー!!悪かったよ!!なぁ、おいっ」
トーマがいる部屋に聞こえるルイの叫び声はだんだんと遠ざかって小さくなっていく。
ドシャア。
「……っ痛………」
ルイの身体は冷たい床の上に投げ出された。
そして、間髪入れず壁に備え付けられた手枷に手を通されて、脚が微妙につくほどの高さで身体を固定された。
「……っつ……」
「腕痛いんだけど!やめてくれよ!」
主は、ルイを見て淡々と話す。
「いやぁ、わたしのトーマを良くぞここまでやってくれたな。限度を超えておる。……約束通り、お前も同じ目に合わせてやるからな。」
「あいつの身体は、腹筋がボロボロになって肺が使えなくなっている。心臓も、肝臓も機能低下が著しい。生命の危機すら感じさせるほどだ。お前も、同じかもっと苦しい目に合わせてやるからな。」
「わたしはルークだ。ここで廃人となってもらうが、せめてもの情けで名前だけ教えてやる」
「………」
ルイはジャラジャラと鎖を鳴らし、身体を前後に揺する。意味もなく後退りをしながら、滝のような汗をかいていた。
「なんだ怖いか。トーマは……もっと怖かっただろうなぁ。」
ルークは、ルイの胸をベタベタと触る。
ルイは急上昇している自身の心拍を感じ、身体がそれによって揺れているのを自覚した。
「……なぁに、この薄い筋肉も、必死で動く心臓も、全部使い物にならなくなるだけだ。心配はいらな………イッ!!!」
ドスゥ!!!!
「ぐはぁああああああー!ー!ーーーーーー!!!!」
ルイの腹に、ルークの拳がめり込む。
痩せているために割れたように見える腹筋を力の限り収縮させる。
ルイは腹を折り曲げて、腹筋を大きく凹ませながら大量の胃液を吐き出し始めた。
「ォオオウェ!!!!ビチャァッ!!!!ウェーーーーー!!!!」
「……ぅつぷ!!!………ォオオウェええええーーーー!!!!ビヂャァーー」
ルークは、ルイの髪を掴み、前かがみになっている顔を無理やり上げさせる。
「やっと内臓の準備体操が終わったな。つぎは筋肉。」
そう言って、ルークはルイの足下に鉄でできた有刺鉄線で埋め尽くされた箱を置いた。
ルイは反射的に足を上げる。だが、腹筋や腕を使って身体を持ち上げないと避けられない高さに、それがあった。
「そのままだと足がズタズタになるぞ。筋肉使って耐えろよ。ふははは」
「ごぶ、………ふっ………うっ!!!………」
こみ上げる嘔吐感に耐えながら、ルイは腹筋や腕の力を使って足が当たらないように必死に身体を持ち上げる。
腕の細い筋肉をくっきりと浮かび上がらせて、身体を何とか保っている。
「はぁはぁ………ハァハァ………」
先ほどのトーマへの腹責めにより、ルイの上半身の筋肉はかなり疲労していた。
荒い呼吸により貧弱な肉体が風船のように膨らんでいた。
「……ふふふふ!この細い腕ッ!!これにトーマが!」
ルークはそう言いながら、必死に力を込めつづけている、二の腕周り30センチもないような細い右腕を掴み、上腕二頭筋をゴリゴリと指で潰していく。
圧迫されることから逃げられない腕の筋肉は、皮膚の中でゴリゴリと繊維を潰されて徐々にその機能を失っていく。
「ぁあああーーー!!!!ぎぁああああああ!!!」
「腕の筋肉がぁあああああ!!!!つぶれるううう………ぁっあああ!!!」
ルイは大声をだして痛みに耐えている。
声を張り上げるたび、薄い腹筋はギュッとしまって辛うじて腹筋の形状が浮かび上がる。
ものの1分で右腕は青く腫れ、体重を支えることのできる筋力を発揮できなくなり使い物にならなくなった。
そのうち、酷使した左腕も痙攣を始め、バランスを崩した足が有刺鉄線に刺さりだす。
「っあああ………あーーー………いて………ぎぎ………」
ジャラジャラと手枷の音は大きくなり、ルイの体幹は大きくブレだした。
必死で腹筋を使って足を上げ続けようとするが、小刻みに震えた腹筋にもその力は残されていなかった。
足の先からは血がにじみだす。
フゥッ!!フゥッ!!と、ルイは恐怖を全身で感じながら荒く呼吸する。
足をあげようとしても、腹筋がビクビクと痙攣するだけだ。
必死に力を入れてダメージを回避しようとしているルイを見てルークは笑った。
「あっけないな。じゃあ次はいよいよ腹責めだ。」
ルークは有刺鉄線の箱を移動させた。
「そうだな………顔だけ水に浸けて腹責めしてやるよ。水を飲めたらただの腹責めで済む。もし……飲まないと窒息するかもな。どうだ?ゲーム感覚でやるか。」
「ぅああああーーー!やめて下さいっ!!!謝ります謝ります謝りますごめんなさいごめんなさいーーーー!!!!」
「フン、忠告を守らなかったお前が悪いのだよ。」
ルークはムッとした声で反論する。
「じゃあまずは、水を被ろう。」
後ろにいた近衛兵はテキパキとルイの頭に水槽をはめ込む。首には丁寧にパッキングが施され、水が漏れないように施工される。
そして、水が入り始めた。鼻の高さまでで1リットルくらいだ。
「ヒィッ!!!………あっやば………はあっはあっはあっ!!!!ヒィ……はうっ!!!」
ルイは肺を大きく膨らませ、必死に酸素を蓄えようとしていた。
だが、その間にどんどん水は溜まっていく。
足をバタバタとさせて、手枷がジャラジャラと鳴り響いている。
「あぶぅ!!!!はあっはあっはあっ!!!あ!!!あ!!!はあっ!!!ボコっ!!!ブクブク!!!!」
水が鼻の位置まで満たされ、いよいよ、ルイは呼吸ができなくなった。
さらに激しく足をバタつかせ必死に逃れようとする。
もったいないことに口や鼻からパニックになってせっかく貯めた空気を吐き出している。
ゴポッ!!ゴポッ!!
「水を飲めばいいんだよ。飲めば。」
ルークは大声でルイに叫ぶ。
ルイは必死で喉を動かし、水を飲み続ける。喉仏を何回も動かし、必死で水を飲む。
「ッズゥーーー!!!スゥーーーハァーーーー!!!」
そのおかげで、鼻から呼吸を再開することができた。
腹筋のわずかな割れ目が伸縮し、体内に空気を流し込む。
「そうだ。いいぞ」
ッドゴォーーーーー!!!
ルークはルイの腹を思いっきりアッパーで撃ち抜いた。
腹筋は拳で潰されてルイの身体がおおきくゆれる。
「ゴポォ!!ゴボォ!!!」
ルイの口から再び水が逆流し、呼吸ができなくなる。
ルイは途端にパニックに陥り、手をバタつかせて手枷を大きく揺らしだす。
呼吸が猛烈に苦しく、ルイは再び水を飲むことができないままだ。
ドゴォーーーーー!!!
バチィッ!!!
メリィっ!!!
ルークはルイの腹を何度も殴った。
腹筋は赤く腫れ上がり、神経へのダメージで一時的に呼吸停止しているにもかかわらず、鳩尾付近の筋肉は高速で陥没と隆起を繰り返していた。
息の流れが完全に閉塞する中、身体は何とか息を吸おうと必死で筋肉を動かし続けたのか、単なる痙攣なのかはわからなかった。
ルークは、ベコベコと動き続けているルイの腹筋を触る。
薄い筋肉ながら、硬さは順分ある。腹筋の割れ目を指で触りながら呟く。
「苦しそうだなぁ……まぁ水を飲めばいいだけだがな」
「さあ…………飲めェ!!!!」
ルークはルイの腹筋を鷲掴みして、グチャグチャと握り潰し始めた!
内臓はなす術もなくかき回される。
「……貧弱な筋肉だ。こんなもので内臓が守れるのか」
ルークは笑いながら腹筋をグチャグチャと潰す。
薄い腹筋は形を壊されないよう弱々しく収縮し、指で潰されるたびに痙攣させていた。
腹筋を握力で潰されている何回目かの時、急にルイの身体はえびぞりになり、太腿がガクガクと痙攣し始めた。
「……そろそろいいだろう。水を抜いて、最後の仕上げだ」
「おい、水から顔を出してやれ」
そしてルイは呼吸ができるようになった………が………
「ゼェッ!!!ピィ!!!ピーーーーー!!!」
笛のような変な音を発して、まともに呼吸が戻らない。
どうやら、腹筋をグチャグチャにされた過程で気管を損傷し、酸素がうまく取り込めなくなったようだ。
「なんだ鳥の真似か。その腹まだ動いているな。必死に息を吸おうとして腹筋が動いている。殴って動きを止めてやる。」
「ガーーーーー!!ヒィーーーーッッ!!やめ…………スゥーーーーー」
ルイは必死に話そうとするが、声が出せない。
バスゥ!!!!
「……ぉ………ぁあああ…………」
腹筋は一瞬6つに割れて、ルークのパンチを受け止めた。
だが、もう弱り切った腹筋の最後の力では、到底耐えることは出来なかった。
パンチが命中した瞬間、ルイの腸は潰され、内臓は著しく変形したようだ。
体内の生命活動は数秒停止し、ルイの意識だけが残った。
「……!!!………!!!」
ルイは口を大きく開け、呼吸が止まって窒息による苦しみを味わうとともに内臓へのダメージ、腹筋の損傷による痛みを同時に受けていた。
腹は全体が赤く腫れて、もはや腹筋がそこにあることは分からなかった。貧弱な筋肉しかない大胸筋よりも膨れ上がり、肥満にさえ見えるほどだった。
ルイは舌をダラリと垂らし、白目を剥きながら泡を吹いていた。
「……内臓は1ヶ月は戻らん。そしてその腹筋もしばらく使い物にならん。トーマの苦しみは……やっとわかってくれたかな?」
「ではお客様、気をつけてお帰りに………」