ヒロト20歳。
2530年に生まれた。
175センチ58キロとかなりの痩せ型だった。
この時代は、豊かな文明が環境破壊により維持できなくなり、肉体労働によって何とか生活を保っている生活水準だった。
そのため、周りの男たちは筋骨逞しく、そして特に腹筋が発達していた。
男たちの腹筋が強ければ強いほど、その集落において性行為の機会を多く与えられる。
このため、腹筋の発達した逞しい男は、至る所で腰を振り、精液を放出し、はぁはぁと息を荒げながら励んでいる。
ヒロトは筋肉が生まれつき弱く、腹筋はおろか全身の筋肉が少なかった。
ベンチプレスは30キロがやっとだ。
腹筋はかろうじて4個に割れていたが肋骨は浮き出ており、筋肉の形が皮膚から透けて見える程度の筋量しかなかった。
腹筋の強さを競う大会に出場しても、腹へ男からパンチをもらうと例外なくその場で嘔吐し、痙攣しながら性器を勃たせて射精を繰り返す醜態を晒すだけだった。
21歳となったとき、町長がついにヒロトを呼び出した。
「なぁ、ヒロト。わかるか、今日のことが」
「はい。俺の筋肉が弱くて……その」
「……そうだ。肉体改造施設へ、行ってもらうことになった」
「………」
ヒロトの心拍が猛烈に上昇し、顔が赤く火照り出す。
「ヒロトの睾丸やテストステロンは問題がない。しかし、残念なことに筋繊維量が他の男たちより少ないんだろうな。だから、全身に猛烈な負荷をかけて筋繊維を常に破壊し、タンパク質を強制摂取しつつ筋組織の肥大を図るしかないのだ」
「…………」
長は、ヒロトの胸を触った。町長は若く30歳の青年だった。筋肉は街で一番発達し、その肉体は男をも魅了するほどの強さを誇っていた。
「……もう心拍が120を超えておるぞ。それに、呼吸も荒い」
「辛いが、筋組織を発達させることだ」
……そして4日後。ヒロトはB1と呼ばれる施設へ向かって出発した。
「ヒロト……お前早く筋肉つけて戻ってこいよ……」
幼馴染のハヤタが寂しそうに言った。
ヒロトが出発したあと、ハヤタは1人呟いた。
「ヒロト……頑張れよ」