……これで478回目………
頭がおかしくなりそうだ………
もう、ころしてくれ……。
ベッドに拘束されて寝させられた青年は、脳内でそのことばかりを思考していた。
全裸の、発達した筋肉を荒い呼吸で上下させながら、汗だくになっている。
だが、身体は傷ついていない。
スパイ任務に失敗し、囚われているにもかかわらず。
注射器を持った男がニヤニヤと話しかける。
「もうそろそろ君の悲鳴にも飽きてきたんだよ。479回目?あと9500回も残ってるのにね。」
「次はどんなことをやられたい?最も君の脳内での幻覚にすぎない……。」
「皮を剥いで筋肉ぶっ潰すのはやったよな?心臓もナイフで破裂させたし。肺潰す?それともチンコ潰す?筋肉をバラバラにして1つずつ見せてあげようか。うははは!」
この青年は特殊な幻覚剤により、極めて現実的な夢を何百回も見させられている。
脳と筋肉、神経が完全にコントロールされ、擬似体験が完全に再現される。ただし肉体は全く侵襲されないため、キズや内臓へのダメージはないか。このため拷問は何度も繰り返し行える。
「も……もうやめて………ころしてくれ……」
「ダメだね。だって悪いことしたんだからね。」
「そうだ。君のおちんちん。あれいじめようか。さっき確認したけど睾丸、大きいのがついてるね。その筋肉を発達させるためのテストステロンが大量に出ていそうだ。」
「…………やめろ…………」
「射精したことあるか?」
男は笑う。
「……ふん……。お前には答える必要なんて、ないだろう」
青年は精一杯強がる。
「なら死ぬまで射精させてやるよ。」
「なぁに。君のリアルな精液なんかいらないんだよ。幻覚剤で、だよ。」
「うぐ………!!やはり………くっ………」
青年はこの状況がいつ終わるか見通しの立たない焦りと恐怖で、体が震え出していた。心臓は早鐘を打ちつづける。
「では、いくか。」
そう言って、男は抵抗できない青年の震える首に幻覚剤を投与する。
ほどなくして、青年の露わになっている性器はムクムクと大きくなった。
脈に合わせて血液が流し込まれ、1分ほどでボコボコの腹筋に張り付くほどに勃起した。
16センチほどの長さで、先は完全に露出していた。
「いい性器を持っているな。何人相手にしたんだ?……さぁ今から射精タイムだ……。もし射精ができなかったり精液が止まるとこの鉄アレイを腹筋に落とされるぞ。」
「かなり重いやつだ。2つで48キロ。当たりどころが悪いと死ぬかもな。せいぜいしこりつづけるんだな」
男は笑いもせずに青年に向かって話した。
ダンベルを持つ男の腕は、気づかなかったが上腕二頭筋がメロンのように肥大化していた。かなりの怪力を発揮しそうだ。
「くっ………殺してくれよ……」
青年は半ば泣きそうな顔をしながら、勃起した性器をしごきつづける。
だが、性欲は全く湧いてこないため、むしろ勃起を維持するだけで精一杯だ。
「全然精液でてこないじゃないか」
「………ダンベル1発」
男は、ダンベルを高く振り上げて、青年の腹に向かって投げつけるように落とした。
ドスゥッ!!!
ドスゥッ!!
「ヴ!!!おぅ!!!!」
2つのダンベルが、青年が歯を食いしばって固めている腹筋めがけて落ちる。
鈍くバウンドし、床に2つとも転げ落ちた。
青年は口や鼻から胃液を噴出させて激しく咽せる。腹はみるみるうちに青く染まり始めた。
むせるたびに、痛んだ腹筋はシックスパックを強調する。
「う………ごぽ………ビチャァ………」
だが、痛みからか性器は萎縮し、元のサイズに戻っていた……。
「………勃てよ!おれのチンコ………死ぬぞ………」
必死にしごいて勃起させようとするが、腹の痛みと恐怖で全く反応しなくなってしまった。
「う………!くっ…………!!」
腕の太い筋肉に筋を立てて必死にしごき続ける。
「………うっ……はぁはぁ……」
「なんだダメか。」
「2発目。」
ダンベルが振り落とされる。
カシャーーン!!!
ドゥッ!!!
さっきよりも乱暴に投げられた。
肋骨の下部が粉砕し、少し肺に刺さったようだ。
「……ぎゃ………あ……ぁ………」
青年は赤黒く腫れ始めた腹を隠すように体をくねらせ、腹筋を反らす。
肺に穴が空いて呼吸が苦しくなり、ゼェゼェと音を立てはじめる。
「おいおい射精はどうした」
男は青年の腹を仰向けに戻した。
「ぜっ………あ………ゼェゼェ………無理……」
胸が速い速度で上下し、息を吐くたびに腹筋が締まる。
「3発目」
ドム………!!
「ぉおおおおおごぉーーーー!!!!!」
勃起しかかった性器の上に落ちた。
性器は真ん中で折れて、避けた部分から血が吹き出す。
脈に合わせて、ドクドクと激しく流れ出る。
「あーーーーーー!!!ぎゃぁーーーー!!!」
それでもなお、青年の性器に血液はおくりこまれ続け、根元が勃起を強める。折れた部位より先は、血液が抜けて柔らかくなっていた。
「いたぁっ!!!……いっ……ゼェーーー………ゼェーーー………」
青年は白目を向いて失神すると同時に射精した。
裂け目から、白い精液がドロドロと流れ出てピンク色になっていく。
ゼェゼェと激しい音を立てながら青年は必死に呼吸をつづける。
「なんだまだいけるじゃないか。鍛えていても、その筋肉は役に立たないな?わはは」
そう言って、失神して舌を垂れ流す青年の頬を叩き、覚醒させる。
「……ゼェーーーゼェーーーやめてもうゼェーーーッお願いしますゼェーーーッ」
「おい射精止まったぞ。」
「出ない!!もうでない!!ゼェーーーッ………はぁはぁっ!!」
青年は性器を触ろうとするが、折れていて激痛でなにもできなかった。
フゥ…。
「4発目」
どゴッ………
鈍い音がした。
1つが青年の胸に直撃し、心臓の真横に位置する肋骨が陥没した。
もう1つは腹筋に直撃し、息を吐いていた時だったので内臓に深くめり込んだ。
「ご………ぐ………ぎーーーー………」
金切り声を出し、精液がまた流れ出てくる。
肋骨が折れ、肺に大きな穴が空いた。
そして内臓が傷ついたのだろう、尻からも血があふれ出ていた。
「シューーーーッ!!フーーーー!シューーーーッ!!!」
呼吸を必死に行うが体内で空気が漏れて肺が膨らまなくなった。
肺から空気が漏れ、体内に溜まる。息をするたび、体内が膨れていく。
「ぁあ、もうだめだ、体に空気が詰まって心臓止まる。君、サヨナラだ。」
男は残念そうにつぶやく。
「……!!シューーーーシューーーーシューーーー!、!、」
(助けて助けて死にたくない苦しいくるしいしぬいやだ)
無我夢中で体を左右にくねらせて逃れようとする。心拍数が上がり、性器から出血する量が増えてきた。ドクドクと脈に合わせて噴出する。
しかしすぐに腹筋を激しく痙攣させ、眼を見開いて口をパクパクさせ息を吸っていたのだが、必死になればなるほど状況は悪化していき青年の上半身はパンパンに膨れ上がっていった。
そして青年は肺から漏れ出した空気で心臓が圧迫され、程なく体全体をビクビク痙攣させながら心停止した。
青年は眼を覚ます。ベッドの上だ。
それは、絶望の再開だった。