数十人いた乗客も、ついに後2人となった。
1人は、運で生き残った27歳の男Tと、
もう1人は、腕っ節で残った32歳の男Aだった。
Tの身体はみるからに貧弱だった。
細く筋肉がない身体だった。
体脂肪も少なく、細くて貧弱そうな腕や腹には血管が浮いていた。
かろうじて腹には薄く筋肉が浮かび上がり、そこに筋肉があるということは確認できた。
大胸筋はふくらみがなく、力が入った時に放射状に筋繊維が見えた。
そんな彼は、膝を震わせて恐怖と闘っていた。
「あああ……やられる」
「ただ、目につかないようにしてただけなのに………」
口をガタガタと言わせながら、Aを伏し目がちに見ていた。
一方Aは何かの格闘技をやっていたのか、細身ながら筋肉の詰まった身体つきだった。
脚も太く発達し、腹筋は力を入れない状態でも6個に割れていた。
Tを威嚇するため腕を曲げるたび上腕筋が盛り上がる。
Aが先手を打ち、Tの腹にジャブを放つ。
あまりにも早い動きだったため回避行動は取れず、Tの腹は体重の乗った拳をそのまま受け入れた。
ドスッ!!
腹は凹み、Aのパンチを防ぐために伸ばしたTの腕や肩の筋肉が筋を立てて懸命に防御していた。
「ぐは!!げぇ…………げぇ………」
Tは腹を抑え、少しでも離れようとヨタヨタと遠ざかっていく。
A「逃げるなよ、しばくぞ」
そう言いながら、窓のちかくに追いやる。
壁に背中をつけ、打撃の重さが抜けないようにTを追い詰め、腕の動きを封じながら、さらに腹を殴る。
ドスゥ!バスゥ!!
ボゴッ!!!!
ドアが揺れる。
Tの腹は何度も凹み、今まで受けたことのない強さの打撃を薄くて弱い腹筋が必死に防御していた。
首は血管が浮き、口を大きく開けながら何度も何度も吐瀉物をまきちらした。
もはや、痛みと吐き気で立つこともままならないTは、その場で崩れ落ちそうになる。
だがAはわざとそれを支え、無防備になったTの腹に膝蹴りやブローを繰り出す。
「ぼぅあっ!!ごぼぉ、!!ごぼおっ!!!けぶぅ!!………おぇっおえっぇえええ」
腹筋を大きくしならせながら、さらに嘔吐を繰り返す。
その合間に激しく必死な呼吸が挟まる。
過剰に収縮を繰り返す腹筋がビクビクと大きく動くため、Tの腹はずっとガクガクと震えていた。
「まだ動くんけ?ちょっと触らせろやその腹」
Aは、もはやAの腕や身体に全体重を預けているTの腹を指で押した。
「腹筋、薄ッ!!潰してやろか?」
Aは、手を広げてTの腹筋をつかみ、そして、ねじりながら回転させる。
腹筋がねじれ、体内の結合組織が痛む。
ドロドロの顔になっているTは泡を口から溢れさせながらくぐもった声で叫んでいた。
「ガバァ……ああぁあああ……ゴブっ……」
「胸の筋肉は盛りあがっとらんし腹筋も触っても割れてないし、息吸った時に骨からペコペコ動く心臓が見えてるだけや」
「まだ意識あるんか、しぶといな。早よ倒れた方が身のためや」
「……足ガクガクして太ももの筋肉ビクビク痙攣してんの?ほっそい足やの!折れそうや」
Aは1人で呟きながら、Tの必死に内臓を守ろうとして収縮し続ける腹筋を掴み、ねじり、腹部にダメージを与え続けた。
腹部の中で蠢く、まだ硬さのある筋肉たちを潰していく。
腹筋は徐々に硬さを失い、薄い筋繊維はAの握力に負け始めた。
ぐぁ………!!
ぁあっ………
Tは弱く呻き声を上げながら、ゼェゼェと息を荒くしていた。
「ハァハァ苦しそうに呼吸してんのが手に伝わるな。風船みたいに胸が膨らんで肺が動いてる。腹ん中の血管もドクドクしてる」
「なあ、くるしいか?吐きそうになってんのか、腹筋がグググって動きよる」
Tは、全身全霊の力を込めて、呼吸を繰り返していた。今までの腹責めにより全身の筋肉は疲弊し、絶え間なく酸素を求めていた。
「………でも腹筋の力抜いたら………こんなふうに…………胃も肝臓も!潰れる………ぞぉーー」
Aはそう言いながら、少し弾みをつけて肘でTの腹を打ちつけた!
ドォーン!!!
ボスゥ!!!!
………ア………アガ……………
……………
衝撃の直後、呼吸が止まり、悲鳴を発することもできず腹を潰された。
その場でようやく崩れ落ちることができ、凹んだままの腹を上に向けて仰向けになった。
倒れたTは、手足が跳ねるように痙攣している。
心臓はまだ動いており、首や胸から見える太い血管は激しく拍動を続けていた。
だが、もはや意識は戻ることがないだろう。
胃は潰れ、内臓もその役割を果たすことができないほど損傷しているようだ。
口からはオレンジの泡が吹き出し、腹は青黒く変色し始めた。
A「よっしゃぁ!!俺が1番や………」
「……あれ」
「?」
Aは喜んだのも束の間、腹にレーザーが当たっているのが見え、熱さを感じた。
そして、それはそのまま皮膚を焼き、6つに割れたたくましい腹筋を焼き落としていく。
すぐに分厚い筋肉が、床に落ちた。
「ぁあ……なんで………」
Aは、落ちた腹筋を腹に戻そうと、腹から噴き出す血を浴びながら何度も腹に張り付けてはズルッと落としていた。
「お……おれのはら………」
「腸おちてる」
「いきできない」
「はら はやく ふさいで」
「ふっきん」
「ガムテープガムテープ………ないの?おなかが変や」
どんどん溢れてくる腸も、Aは、必死に体内に押し込んでいた。
だが、支えのなくなった腹は穴の空いた容器のごとくさまざまなものが溢れ出す。
「オマエの腹筋クレ」
「オレに使う」
Aは、息も絶え絶えに、倒れているTの腹を掴みちぎろうとした。
だが、その手にはもう力入らず、撫でているだけのような動作だった。
そのTは目を見開き、ただ口を開けていた。
「ぁあぉ………」
「ぐぶ…………」
Aは大量に血を吐き、そのままTに重なるように倒れた。
………Aの周りには、血液、腸や筋肉の塊で埋め尽くされていた。そして、かなりの量の精液がこぼれ落ちていた。彼の、勃起した性器から発射された大量の精液が。
「お客様、射精は禁止とお伝えしましたが」
「お隣に倒れているお客様ともみ合っている最中から、何度も射精されていましたね」
「全員、残念ですがこちらでお別れです」
「機会がありましたら、またのご利用お待ちしております」