すでに若い男の腹筋は、目で見てわかるほど細かく痙攣を繰り返していた。
高校3年の少年は、日頃の行いで少しばかり学校で目立ってしまったばかりに不良グループに目をつけられた。
このため、使われなくなっていた古いアパートの一室で、全裸にされた上に口にワタを詰められ、声帯を麻痺させる薬剤を飲まされていた。
いくら叫ぼうと思っても、喉からは何も出ない。
ヒィヒィと、ストローを吹いたような風の音がするだけだ。
サッカー部に所属しているこの少年は、肌は浅黒く筋肉質な身体をしていた。
174cmと長身かつ骨太で、締まった筋肉は全ての部位において満遍なく発達していた。
腹筋は力を入れずとも6個に割れて隆起しており、横たわった身体のあらわになった腹筋の溝には、大量の汗が溜まっている。
先ほどから幾度となく悲鳴を上げているのだろうが、声帯が麻痺して声を発することはできない。ただ、声の届かない悲鳴を上げるたびに腹筋が締まり、筋肉が浮かび上がった。
だが、側から見ているとただ単に呼吸を繰り返しているようにしか見えない。
その上、仰向けにされた顔は毛布の中に埋れているため、表情からも反応を伺うことはできない。
「連れてこられた時は震えて泣いてたのに、いまはビクビク痙攣して感じてやがる」
「セックスしろって言ったらする。オナニーで精液無くなるまでシコる。他も何でもやるって言って泣き喚いてたよな」
「そう言うからさぁ。その腹の筋肉切り裂いて腹筋食べる?って言ったんだよ」
「……そしたら、それは無理って。死んじゃうってな。」
「だから筋肉ギッタギタにつぶすのでかんべんしてあげてるんだよな?ハハハッ」
「じゃあ射精したら許してくれますか?…………とか泣きながら言っちゃってたよね」
「急にシコりだしたけど勃起しなくて、でも射精しようと必死になってたよな。大胸筋ピクつかせながらさ。………俺ら、そんなことには興味ないし。」
「……まぁ、目をつけたやつの腹筋潰して再起不能にするので、結構この辺じゃあ有名だから。頭オカシくなるのも、仕方ないさ」
「……そうだよ。こんな筋肉目の前にして………潰さないわけない。」
「そういうわけだ、少年。頑張って鍛えたその筋肉、今日で全部壊してやるよ。」
そして、少年の腹筋に電極が貼られた。
スイッチを入れられ、数分後。
少年の身体から汗の湯気が出ていた。
「見ろよ、こいつの腹筋勝手にビクビク動いておもしれーな」
「身体触ったら岩みたい。この筋肉、極上だ。俺も興奮してきた」
「さすがこの電気のマシン、筋肉潰すの容赦ないな。ロシア製なだけあるわ。よしもう一回やろうぜ」
「ああ」
再び、少年の6つに割れた腹筋に電極を当ててスイッチを入れる。
少年の手が慌ててその電極を外そうともがく。
「……チッ!大人しく寝てろ!」
少年の手を持って、バンザイの体制に無理やり押し付ける。
バチ……
一瞬で、腹筋の上に血管が浮き出る。
抑えられていた両手が激しく震えだした。
全身をくまなく駆け巡る電流は、その肉体の骨格筋も満遍なく痛めつける。
少年の身体が弓形にそり、硬直する。
この装置は、限りなく筋繊維にダメージを与えるよう調整されている。
特殊な波長の電気は、人間の血管を収縮させるのだ。
波長を混ぜて人体へ流すことで、筋肉への栄養がストップして筋繊維は疲労し、そして破壊されていく。
少年の腹筋はさらに青白く太い血管が浮き出て、筋肉が躍るように痙攣していた。
1分ほどしただろうか。少年の身体は硬直して弓形になりはしつつも、もう力が出せないのだろう。徐々にその体制を維持できなくなり、身体が床につき始めた。
「あーあ、さっきは3分行けたのに。こんな筋肉ついてるのに、弱いな」
「……ふふ!ほらみてみろよ。腹筋がバグってる。こんな動いて、おかしい。ふふふ!!」
「いやいや。そりゃ呼吸だよ。酸素が足りなくて必死なんだろう。これだけ筋肉使えばそうなるわな」
ゼェゼェと少年は死にそうなほど激しい呼吸を繰り返していた。腹筋はパンプアップし切って盛り上がり、そして痙攣のため6つのふくらみがランダムにピクついていた。
「この腹、みて。腹パンしても全然硬くならない!」
「拳押し込むと、筋肉がプルプル痙攣する!!」
「大胸筋はまだ硬いのに、腹やわらかっ!!」
少年の腹筋が弄ばれる。
毛布の奥からは、激しく長い呼吸が聞こえた。口は塞がれているため、鼻だけが空気の通り道となっている。
「なぁ少年。もうこの腹筋、力入らないのかな?」
少年は、ただひたすらに腹を動かし、荒く必死や呼吸を繰り返す。
「答えられないよな。よし、もう一度電気。」
「腹筋がぴくりとも動かなくなるまでやってみたらどうかな?」
「やってみるか」
バチ。バチバチ………
少年の腹筋は大量の汗をかき、電気をさらに通しやすくなっている。
「……お!!腹筋硬くなったっ!」
少し休息を与えられたからだろうか。筋肉が少しだけ疲労回復して、動きだした。
少年の身体はふたたび弓形にそりだした。
「伸びても6つに割れたまま。」
「ちょっとパンチしてみよう」
ドゴッ!!
少年の身体は、衝撃で地面に背中をつけた。
だが、バネが入っているかのように、痙攣しつつもふたたびそり始めた。
「おもしれぇ!またやってやろ」
ドゴォー!!!
弱々しくも、またそってくる。
腰を浮かす際に腹部はグラグラと不安定に揺れ、それでもなお残存している筋力を全て使い切りながら全身を硬直させていた。
ドゴォー!バスゥ!!!
……そして、5回目ほどだろうか。
少年の肉体はついに反り返ることができなくなり、その場でわずかに背中を浮かせながら腹を大きく痙攣させるだけになった。
「どんなに頑張っても筋肉がコントロールできないって辛いよね」
少年の腹がわずかに反ろうとし続けるのを片手で押し続ける。掌には筋肉の緊張と痙攣が伝わってきた。、
ズゥーーーー!!ズゥーーーー!!!
と、少年は肩をすぼめながらさらに呼吸を激しく行う。
もう腹部の筋力が残っておらず、横隔膜も疲労している。上半身の筋肉を使って無理やり呼吸を続ける。だが、燃費が悪く呼吸すればするほどさらに苦しくなっていく状態だった。
「電気とめるね。もう面白くない。筋肉震えるだけでぜんぜん動かないし。」
ようやく全身の硬直は収まった。
「苦しいよな?」
少年の胸に耳を当てる。
ドドドド!!!ドドドド!!!
猛烈に鼓動していた。
恐怖と疲労で、心臓はフルパワーで動き続けていた。
痙攣を起こす筋繊維も消耗してしまい、微かな震えだけとなった少年の腹部。
呼吸の度に胸部は大きく膨らむのだが、わずかに腹筋に力が入るだけで呼吸の役には立っていないようだ。
「じゃあ内臓潰そうぜ。腹筋6こに割れてるけど、もうただの肉だし。あっ。さっきからやりたそうにしてる射精、できたら許してやるけどな。………ま、手は上で縛ったし、どうやってイクのかは………ふふふ!!」
ひぃーーー!!!ヒィーーーッ!!!!
あーーーーー!!!
少年は、必死に声を上げる。
正確には、息を漏らす。
体を弱々しく揺すり、やめてほしいと懇願していた。
「腰振ってみなよ、少年。そしたら許してやるわ」
……少年は、腰を上げることができない。
腰回りの筋肉はもはや動かず、腰どころか背中すら浮かせることができない。
必死に力を入れようとするが、筋肉は弱々しく収縮するだけで肉体の重さを支えられなかった。
「はははは!!だめかぁーーーー。こんな筋肉質で腹筋割れて、ムキムキなのにねぇ。」
「じゃぁ、そうだな。腹パン10回で吐かなかったら許してやるわ」
少年の顔から毛布を外す。
汗でぐちゃぐちゃになった、茶髪の若者が顔を出した。
オラァッ!!!
少年のただの肉が詰まった腹に拳が直撃する。
筋肉に反発はなく、ただ沈んでいく。
1回目のパンチから、少年の鼻から胃液が噴出する。
おぉおおおお!!!と言う声を出している口のカタチをした少年は、胃液を壊れたポンプのように吹き出し続ける。
「……ふう。筋肉、もう全然だめだな。」
んグゥゥゥウ……!!!
ビチャァーーー………
ズッズッ………ぐぅうう
少年は吐瀉物が鼻に詰まり、ときおり呼吸が止まっていた。必死に肺の中の空気を送り出してつまりを取ろうとしているが、限界も近い。
呼吸音も小さくなってきた。
「……なぁ。もう身体が耐えられなくなってきてるな。最後に腹筋掴んで潰すね。」
ズォオ……ブフッ………
…………ズゥウ……
弱々しく音を立てて呼吸する腹を掴み、筋肉を指で潰していく。
「上の2つ、両手で握って身体に押し込む!」
筋肉を掴み、全体重をかけて少年の体内に押し込み始めた。
少年の筋肉は反応せず、ただズブズブと体内への侵入を許す。
「なんだここ。ゴリってする、硬いものがある。胃かな?」
「いいこと考えた。ここに電気流せるかな?この臓器に。」
「やってみるか。たぶん、波長を少しいじれば体内に反応させられるはずだ」
電極を、少年の鳩尾に貼る。
押さえつけられたままの腕を必死に動かして、電極を取ろうともがく。
「暴れてるけど筋肉死んでるから全然力入ってないよ。さ、スイッチ入れるよ。」
ばち………
少年の筋肉は、ほとんど動いていなかった。
内臓………すなわち胃の筋肉が激しく動きだしたのか、少年は鼻から胃液をゴボゴボと吹き出し始めた!!
ガパアッ!!
ゴポッ!ゴッ!……ガフッ………ゴボゴボ
ガッゴボボ……ゲホォ……ゴホッ……!!
体内で踊り狂うように収縮する胃は、容赦なく少年の口から胃液を噴出させていた。
泡混じりの液体が、ゴボゴボと吐き出されている。
嘔吐反射が絶え間なく発生し、少年の腹が弱々しくうごめく。
口から泡を吹き続け、目は上転して意識を失いつつあった。
「おお!!!内臓まで痛めつけられるのか。最高だね。」
「胃の筋肉も、ムキムキになれるね。この少年。ふふふふ」
「最後に、その腹の筋肉……仕上げだ。」
まだ6つに隆起した形状を保っていた腹筋「のようなもの」に拳を当て、心臓方向に突き上げた。
まだ電気による胃の痙攣は続いており、拳には激しく震える胃を感じた。
そしてそのまま押し上げていくと、少年は舌を突き出し、血管が浮いた全身の筋肉を硬直させて何度か口をパクパクとさせた。
……かかか………
…………がっ……….ぃい………
そして、体から力が抜けてそのまま動かなくなった。
この少年は何者かに発見され、この後救急搬送された。
しかし、全身の筋肉はズタボロで胃も深刻なダメージを受けていた。
85kgを誇っていたベンチプレスは15kgしか上がらなくなり、腹筋は1回もできなくなった。
サッカーに復帰できたのは、その半年後……。