西暦2357年。
人は高度な機械化を達成し、労働から解き放たれた。
機械の集中管理生産下による暮らしは何一つ不自由なものはなく、人々は好き放題に生きていた。
たった一つの決まりを守れば………。
「男性は、腹筋を自身の持つ区画が全て浮き出るように維持すること。必要に応じて筋肉を肥大させる措置やステロイドを用いて良い。さもなくば、大衆の前で矯正措置を実施する」
この規則のおかげで、腹筋を割ることのできない貧弱な男は一掃された。
それにより、負荷のかかる作業から解放された人類…とくに男は筋肉を維持し、むしろ2000年代の男よりも筋肉量が増えて肉体の強度は上がっていた。
このためこの時代の男たちは腹筋の割れ具合で求愛し、セックスによる腹筋の躍動によりその優位性を誇示していたのだ。
ヒロタは17歳。
身長178センチ、体重69キロ。
持って生まれた腹筋は6パックだ。
そこまで筋肉がつきやすいわけではなかったが、就寝時に筋肉全体を強制的に運動させる装置を利用しているおかげで引き締まった肉体を備え、すでに性的な関係を持つことができていた。
「あーあ、飯食べすぎて5キロも太ったぜ」
「こんな腹でちゃってさ……はは」
友達と何気ない会話をしていた。
友達が言った。
「まさか腹筋………」
「割れてる……よな?」
「あー見る?いや。見えてるか。割れてるの消えたわ」
「アレ、年に1人あるかないかだろ。見つかるわけないじゃん、心配しすぎだよ」
「……はは……そだよな」
「……でも、最近……パトロール強化されたって噂だぜ。早く筋肉戻した方がいいぜ、ヒロタ」
そんなことを話して2人で街を歩き、アイスを食べていた。
ここの住人は全員が全裸で生活しており、各々の肉体は住人によって監視されていた。
その時だった!
ピーーーーーー!!!
怠惰な男性を発見っ!!!
急に甲高いアラーム音がなった。
「やっ………べ」
ヒロタはとつぜん滝のような汗をかいてその場でへたり込んだ。
腹筋が8個に割れた友達は「お、俺じゃない……」と震えながら腹筋に力を入れて、8個の割れ目を強調していた。
「おまわりさんっ、俺違うっ……ほら8個に割れてますっ」
「見えますか?ほらっ割れてる!触って」
そう言って警官に腹を触らせ、友達は逃げた。
「ヒロタさん、腹筋……脂肪に隠れて確認できませんね……ステロイドでも強制的に鍛える装置でも、なんでもあったはずなのに」
「治安維持のため脂肪吸引と腹筋の肥大を実施します。」
警官がやってきてヒロタを拘束した。
「心拍148、呼吸30。やや興奮しているが心肺機能は正常ですね。心拍240まで上げ、苦しみの中脂肪を減らして逞しい筋肉を付けていきましょうね。」
「あああ………」
「すっ………すみませんでしたぁあああっっっっ!!!!俺が悪かったですっこんな腹になるまでほったらかしにしてっ」
「かっかっかっ……かえったらマックスで腹筋わりますっ!!!割るまで家から出ませんっ」
「………痛っ………刺さないで………それヤバいやつじゃん………それで身体ぐちゃぐちゃにされてボロボロになって人体再生室行かされた人知ってるよ………」
「……あっ……」
ヒロタは弁解虚しく、その場で手を後ろに縛られ、体に無数の針を刺された。ここから脂肪を吸うらしい。
そして微弱な電気により全身の筋肉を強制的に動かし、多くのカロリーを使うように制御されるようだ。
約1時間行われ、消費カロリーは1万キロカロリーにも及ぶ。
「……心拍174か。かなり怖がっているみたいだな。膝もガクガク震えているし、汗だくだ……」
警官はそうメモをとった。
「そっそうだぁっ!!!警官さんっ!!オレっ、あなたのその筋肉に抱かれたいッ!!」
「俺の身体に、あなたのやつ……いれて………」
ヒロタは今から起こる恐怖を想像した。
この目の前にいる屈強な警官に侵された方がマシだ、と考えたのだ……。
「……いやいやぁ……わたし、あなたを犯すより、筋肉と皮だけになって筋繊維が蠢いて、衝撃に異様に弱くなった身体にダメージ与えて苦しんで絶叫してくれるほうがいいんですよ」
「こうやって、あなたのように余裕ぶっこいてたけど捕まった若い奴の筋肉拝めて、あまりの苦しさにこっちから言わなくても叫んで、筋肉痙攣させながら必死に耐えて、どうにかして死なないように必死になってる姿を見るのがいいんだよぉ!!!」
ヒロタは頭を垂れた。
もうできる足掻きは、何も残っていない。
この警官は、ちょっといっちゃってるみたいだ……。
ギュウゥウウウイイイイイイイ……
ギィィィイィイイイイイ!!!!
甲高いモーター音が響く。
「それ……で……俺の身体の脂肪を……吸うの?」
ヒロタはうわずった声で聞いた。
「そうだ。一瞬でなくなる。自分の筋肉、もっとみたいだろ」
「え……いや………助けて」
「シックスパックなんだろ?いま見えないからさ。見えるようにするだけだよ。ちょっと脂肪がなくなって筋肉が丸裸になるから、殴ったら内臓がすぐ壊れるだけ……」
「さて………吸うか。みてろ」
「あっ……あ………か………」
ジュルジュルと音を立てて、ヒロタの肉体から猛烈に脂肪がなくなっていき、見る見るうちに皮がたるみ始めた。
白く濁ったドロドロしたものがどんどん吸われる。
時折ピンク色が混じっており、体組織からもいくらか剥ぎ取られているようだ。
脂肪に隠れていた腹筋が浮き始め、6個がボッコリと見えてくる。
なお脂肪が吸われ続ける体はさらに細くなり、太い血管、細い血管がともに姿を表す。
身体に浮いた骨とそれを取り囲む筋肉がはっきりとわかるようになった。
「ほら見えてきたぞ。……おお、6じゃなくて8だな。不完全だが臍の下に割れ目がある。」
「あっ……あっ………あ」
体脂肪率が0になるまでやられるのだ。弛んだ皮膚の下には無数の血管が張り巡らされ、筋繊維はビシビシとその繊維を浮かび上がらせる。
筋肉の筋がどんどん深くなる。
首筋は、ドクドクと脈打っている。心臓の辺りも激しくパコパコと動き、やや盛り上がった大胸筋が上下に跳ねている。
「さて、表層は吸ったから次は内臓脂肪だ。腸や腹膜に付いてるやつと、筋肉の内側についてるやつだ。痛っっったいぞ……」
「ぁあああっああーーー!!あぁあああああ………ぁあああ………ああああ」
ヒロタは目を見開き、口を開けて弱々しく叫び、縛られた手を必死に動かしていた。
三角筋が3つに割れ始め、大胸筋も上部、中部、下部と放射状に割れてきた。
目は窪み、腹筋の塊が縦長の形で腹から浮き始めた。
肋骨の下部にある心臓につながる動脈がドクドクと拍動する部分もさらに浮いてきた。そこを摘んだら動脈を塞げそうなほどだ。
そこへ警官が言った。
「措置フェーズ2。筋繊維刺激端子に電気を流し、肉体が運動不能になるまで痛めつける。そして柔らかくなった腹を潰す」
「はっ………っあっんんんんあ………」
「っあ………ぁあっあっああああーーーーーー!!!!!!あっああああああああ!!!!!!!!」
ヒロタは全身の筋肉を硬直させ、腹筋がボコボコと泡のように浮き出ては沈みを繰り返し始めた!
上半身はガタガタと動き、脂肪がなくなり筋肉の形がそのまま見えているヒロタの身体は無尽蔵に消耗していく。
「うむ……心拍238か、悪くない。心筋はまだ耐えられるようだ。身体の筋繊維も元は鍛えていたようだな、通常の男よりも発達している」
彼の性器が屹立し、15センチほどになった。
「これは大きい……」
警官が感心している。
「イキたくて仕方ないか、ほら。脳に刺激を与えてやるよ」
「最近の若者はこれを知らないんだよな。初めての経験させてあげるよ」
すぐさま睾丸が体にせり上がり射精した。
びゅうーーー!!!と、白くて透明な液が辺りに飛び散る。
あまりにも強烈な快感がヒロタを襲った。おそらく生まれてからはじめての自然な射精だ。
普段は電子制御された装置を性器に付けて、イきたい時にスイッチを入れるため、快感は感じない。
「……うぐぃいいいぎ………ぎぃいいいいい…………ぁああああ」
「あああああ…………ぐぉおおお………ぎぃぃぃぃぃぃい」
ヒロタの心拍は最高値の245となり、全身の筋繊維はブチブチと音を立てて切れ始めていた。
ガクガクと痙攣を始め、立っていることすらできないようになった。
しかし、彼は射精の余韻により幸いにも苦しさを感じていなかった。
「うむ、若いから筋肉密度もそこそこ。脂肪を溜め込みさえしなければ、幸せだっただろうに。」
「だが、こうなっては仕方ない。まだ腹筋が機能している。さらにパワーをあげよう」
「うぎぎぃいいいいい………」
ヒロタの腹はボコボコとさらに激しく動き、喘ぐように呼吸をしながら必死に耐えている。
しかしだんだんと腹筋が動かなくなり、ピクピクと痙攣するだけとなっていった。速筋だけでなく、遅筋も消耗し切っている。
体幹を支えられなくなり、ぐにゃりと崩れ落ちる。
「よし、やめだ。56分ほどやったな。消費カロリーは?」
「……9852カロリーです」
「まずまずだ。もうこの身体の糖は消費し尽くして筋肉を分解するしかエネルギー源がなくなったようだ。このまま続けると筋繊維が崩壊してしまう」
「……では、最後に」
はあっ!!はあっ!!!はあっ!!!
はっ!!はあっ!!はあっ!!!
はあっ!!!はあっ!!!
割れた……というか筋繊維の塊がそのまま腹に浮かびつつ必死に呼吸しているヒロタの腹に、警官の拳がズボッと沈んだ。
「おぶっ」
ヒロタは息を止め顔を赤くして喉を鳴らした。
「っぐっは…………がっ」
8つに割れた腹筋は拳にピクリとも反応しなかった。
衝撃を受け止める脂肪がなく、圧力がストレートに伝わり、弱りきった筋肉が押し込まれる。
ブチュッと音がした。
腸や胃にある空気の塊が潰された音だ。
「ほぉぉおうっ!!!!」
ヒロタはその瞬間、口を尖らせ目を見開き、口から空気やらさっき食べたものを勢いよく吐いた。
体を弓形にそらしながら大量の吐瀉物を辺りに撒き散らす。
「おぐっ………ぶっしゃぁぁぁああ」
「ごぼぉぉぁおお………ごふぅううう」
そして、警官の拳が腹に埋もれたまま失神した。
ヒロタの腹筋はもう機能していなかった。
脂肪がないその身体で、パンチを全て内臓が受けたのだ。
筋肉の部位全てがはっきりわかるほどに筋肉が透けている彼の身体は細かく痙攣し、呼吸もどんどん弱くなっていった。
ヒロタは薄れゆく意識のなかで、さっきの射精による快感を反芻していた。
「昔の本で見た、シコるってのは……これかぁ………」
滅多に勃起しなくなった現代の男性。シコることはもはやできなかった。
だが、今は痛いほどに勃起していた。
ヒロタは震える手で股間を掴み、上下にしごいた。
「……はぁっ………はぁ…………」
「……ぁ………なんか………で……る」
どびゃぁっ!!!どひゃっ!!!どびゃっ!!!どひゃぁっ!!!!
ヒロタは2回目の射精を行った。
快感で頭は真っ白だった。
「何勝手に射精してるのダメだよ」
警官がそう言ってきた。
「お仕置き」
ドゴォ………………
「ふぐぅぁっ!!!!!ガッガッぁぁぁぁぁあーーーー!!!!」
精液でドロドロの腹筋に膝を突き立て、ヒロタの心臓めがけて何度も拳を突き立てる。
5度目でヒロタは大きく痙攣し、筋繊維をガチガチに硬直させた。
「ぁぁ……身体の神経が麻痺し出したな……内臓の刺激が強すぎて脳のコントロールが外れてきたんだ。そろそろこの措置は終了だなぁ」
「ああ楽しかった。この男、射精して精液ぶちまけながらゲロ吐きまくって……。腹筋ベコベコ動かして必死な呼吸。そこにパンチ!!!息止まって、身体ビクビクさせて、泣きながら喉かきむしって……そのままパンチを捻って腹に押し込んだら、面白いほど胃液吐いて……普段そんなに身体の緊急事態が発生しないのに、いま生命の危機を感じて脳がフル回転してるんだよ……筋肉硬くして心拍上げて……。でも筋肉潰してるから心拍上げても動かないんだよね……痙攣しかしないんだよ。ふふっ……ふっ………はっはっはっ!!!!!」
警官は笑いながらそう言って、ヒロタをあらかじめ用意していた担架に乗せ、腹を揉み潰してヒロタの内臓を際限なく痛めつけながら病院に送った。
そのまま人体再生を担う病院に運ばれたが、この措置を受けた男が復活できるかは五分五分の確率だった…。
なにせ、内臓はボロボロで筋肉はほとんど損傷している。
その夜警官は、下半身を出しながらニヤついていた。
「今日の男はよかった。久しぶりに手でやるか」
そんなヒロタを思い出しながら、オナニーを始めた。
しばらくして絶頂にたっすると、真っ白くて特有の香りがするものを大量に放出して果てた。