「9999回目だ。いよいよ、あと1回となったな。」
男は感慨深そうに、スパイの青年に語りかける。
均整の取れた肉体、割れた腹筋が大の字になって括り付けられていた。
だが青年はもはや虫の息であり、度重なる拷問で身体はボロボロに痛めつけられていた。
鍛えられた胸の筋肉がわずかな呼吸で上下するだけだ。
意識があるのかもわからない。
「おい、いつまで寝てるんだ。起きろよ」
男は青年に言う。だが、もう反応できる体力も気力もなく、極めて低い意識水準のなかでぼんやりと声を認識しているだけだった。
「………。最後のお楽しみだな。君の筋肉を、電気を流して勝手に運動させてやる。最近鍛えられてないだろ?かわりにやってやるよ。」
男はそう言って、濡れたコットンが先に付いた電極を取り出した。
「いまから筋肉に電流を流してやる。今流行りのEMSってやつだ。鍛えた筋肉を見せびらかすチャンスだぞ。ボディビルダー気分だな。わははは!!………あといい声で鳴けよ」
両手足を縛られて大の字になっている青年の太ももにコットンを当てる。
そして、スイッチを入れた!
「………っあああああ!!!あああああああ!!!」
青年の口から勝手に絶叫が漏れ出す。
意識を強制的に呼び戻され、今まで経験したことのない強烈な痛みと筋肉の引きつりを感じた。
大腿筋が猛烈に収縮したうえで高速で痙攣し、筋肉のカットが浮き上がる。
腰を小刻みに上下しながら、尻の筋肉が震える。
「あああああああ!!!あああああああ!!!」
男はコットンを離す。
2秒ほど弱い痙攣を残し、青年の筋肉は落ち着きを取り戻した。
それからしばらくハァハァと荒い息が辺りに響く。
「……やめて………おねがい……」
青年は号泣しながら男に許しをこう。
頭を上げて、男を涙を流した目で見つめた。
頭を上げていることで腹筋が盛り上がり、綺麗なシックスパックが浮き上がっていた。
「もう一回だ」
男は無情にも、コットンを青年の脇腹に密着させる。青年はヒィ……と悲鳴をあげて身をよじって逃げようとする。
「いくぞ」
スイッチが入った。
「あああああああああああ!!!!!ああああああああああ!!!」
先ほどよりも激しい絶叫が青年より発せられる。
脇の筋肉が激しく痙攣し、かつ背中の筋肉も同様に痙攣し出した。
強制的に発揮される強大な筋力で、背中を目一杯反らせている。
腕の神経にも刺激が伝わっているのだろう、小刻みに腕が震えて上腕二頭筋が高速で収縮していた。
男は青年に密着させた電極の位置をずらし、腹筋の上に持ってきた。
「あああああああああああ!!あっあっあっあっあっあっ!!!あっあっあっ!!!」
青 年の体は反対に腹を曲がり腹筋が異様に収縮し始めて、上半身が細かく波打ち始めた。
腹筋が収縮するごとに体が前に倒れようとして、声も上ずる。
そのまま男は電極を大胸筋の上に移動させる。
「んんんんんーーーーーーーー!!!!!んんんんんんーーーーー!!」
大胸筋はたちどころにギューっと収縮し、上部と下部の筋繊維がくっきり浮き上がり始めた。筋の境目がピクピクと動き出し、電気刺激により無秩序に収縮を繰り返す。
腕は激しく痙攣を始め、筋肉を浮かび上がらせながら小刻みにバタバタと動き出した。
青年は大胸筋の収縮により両肩が前に出て、より胸の筋肉を強調するような姿勢を取るしかなかった。
「ふふふ……胸の筋肉のポージングうまいじゃないか……。太い腕や太腿をビクビク痙攣させながら耐えている姿は滑稽だな…。鍛えた筋肉がおもちゃのように扱われている気持ちはどうだ?」
「んっんっんっんっんっ!!んっんっんっんっ!!!んっんっんっんっ!!」
涙を流しながら顔を真っ赤にして、青年は呻き声を上げ続ける。
喉の筋肉も電流で支配されていたのだろう。舌を動かせず、横隔膜の痙攣で声が漏れていた。
「声が使えないか。ではもう一度、腹だ」
一瞬電極が離され、青年の体内から電流が逃げていく。
全身の緊張がほどけた。
無秩序に動かされた筋肉は酸素を要求し、青年は激しく呼吸を繰り返す。
「はあっはあっ!!ああああやめて……はあっはあっはあっ!!くるしい………!!」
男は、青年の激しい呼吸により浮き出ている腹筋の真上にコットンを置いて電気を流した。
「………あっ!!!おうっおうっおうっおうっおおおおおお!!!おうっおうっおおおおお!!おおおお!!」
腹筋はものすごいスピードで小刻みに伸縮を繰り返し始めた。
電流は太腿の神経にまで到達して、大腿筋が綺麗に筋を浮き上がらせながら同じく高速で痙攣する。
「おっおっおっおっ!!!おおおおおおおおおおおおお………お……」
「………………」
青年の筋肉は電流により激しく痙攣し続けているが、叫び声は突然無くなった。
身体は相変わらず激しく動いていたが、青年の苦悶に満ちた顔は表情を失い、頭部はただ体の振動でブルブルと左右に動くだけとなっていた。
男は電流を流すコットンを外した。
青年の身体は、数秒後に落ち着きを取り戻した。
だが、青年は息をしていなかった。
胸に耳を当てたが、何も聞こえない。
「心臓が止まったか。ならば………こうだ。」
男は、全く動かない青年の胸にコットンを当てて再び電流を流す。
形の良い大胸筋が収縮し始め、肩や腕が誰かに手を振るかのように震え出す。
腹筋もシックスパックをより強調させ、腰を振るように小刻みに動き出す。
「………ぉおお………おっおっおっおっ!!!おおおおおおおおおおお!!」
直後、青年は息を吹き返し、再び叫び出した。
筋肉を蹂躙され、抵抗できないまま弄ばれる。
「きみ、面白いくらい筋肉が反応するね。特に腹筋が踊ってるようだよ。太い太腿の筋肉も、ブルブルしちゃってさ………わははは!!!」
「………さあいよいよ拷問もあと1回。ようやく最後だな。」
全身を跳ねさせ、筋肉を痙攣させてさけびつづける青年をみながら、男はそうつぶやいていた。
青年はこの後も全身の筋肉を弄ばれ、数時間後に解放された……。